3 月 26th, 2008 at 11:39am |
【奥田英朗】 ガール
奥田英朗を立て続けに読んでばかりの私ですが、おもわず「そうそう。そうなんだよね。」といいたくなるようなことばかりが書かれています。
特にこの本は「ガール」。『30代。OL。文句ある?』というキャッチコピーの通り、会社で働くキャリアの女性の悩みが綴られています。それも、独身で、30代。会社の周りの対応が、若い女の子から、お局的な存在へ変わってくる。特別扱いは無くなり、焦りを感じ始める。いつまでも「ガール」ではいられない。そんなコトバにはならない複雑な思いが綴られています。奥田さん、本当によく女性の心理が分かっていますね・・・。
「ガール」
みるみる血の気が引いた。個室に入り、胸の動悸を抑えた。おはさん。若作り。なんて殺傷力のある言葉なのか。自分に向けられたら、ショックで一月は寝込みそうだ。
ただ、彼らを非難する気にはなれなかった。自分が二十代のときもそうだった。若者は、いつだって残酷なほどに正直だ。
「ひと回り」
そんなこともあった。あの頃は、三十歳で独身なんてエイリアンだと思っていた。二十二歳が認める同じ若者とは、せいぜい四つ上くらいまでだった。慎太郎もきっとそうだ。彼の目に映る三十女たちは、想像外の生き物だ。
なんか、心に刺さってくることばです。私も30歳。こういう世界に入ってしまうのかぁ。(すでに入っている?)と思いながら、でも、最後には心がほんわかとほどけていく。そんな小説です。
女性の深層心理を知りたい男性の方にもオススメです。
ガール奥田 英朗
おすすめ平均
清涼飲料水
ガールの深層心理を読み解いた納得エッセイ。奥田氏の眼力に敬服!
30代の女性は必読な1冊。
これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないか。女性の描写力の凄さにも、脱帽!
面白い!
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3 月 25th, 2008 at 11:58am |
【奥田英朗】 町長選挙
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続くこの本。そうです。あのハチャメチャ精神科医の伊良部です。私は当初、この本は長編小説かと思っていたんですが、違いました。今までと同じく、短編集でした。でも、この本の特徴は、なんと言っても、「うん?これは実在のアノ人がテーマなんじゃないか?」と思えるのです。そんなこと書いちゃって良いのか?と思わなくも無いですが、面白いのでオッケーです。
それにしても、今回のタイトルになっている町長選挙。東京都とは名ばかりの離れ小島。人口も二千人程度の小さな島。この島で繰り広げられる町長選挙とは一体どんなものなのか・・・?さすがの伊良部もお手上げか?というびっくりな展開ですね。
でも「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」という名言(?)とともに、伊良部が動き出す。
奥田さんの小説は、今回のような軽い小説から思いテーマの本まで、幅が広くてすきですねぇ。特に今回のシリーズは、気軽に読めて、心がほっこりと和んで・・・。ステキです。
町長選挙奥田 英朗
おすすめ平均
引き続き面白かったが
暴走というより
読みやすさバツグン!伊良部シリーズ
社会に切り込んだ本作
マンネリを解消するための変化球をどう捉えるか
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3 月 18th, 2008 at 11:25am |
【西村佳哲】 自分の仕事をつくる
この本は、「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」のブログに紹介されていた本です。いつも参考にさせてもらっている、スゴイサイトです。
ところで、この本「自分の仕事をつくる」。本当にすごい本なのです。この作家はデザイナーの仕事のかたわら、働き方に焦点を当てて、「働き方研究家」としてステキな仕事をしている人たちにインタビューした結果がまとめられています。
とはいっても、ビジネス書として堅苦しいわけではなく、インタビューのやり取り、そして作者からの問題提起ががぎゅっと凝縮されていて、心に直接響く重みのある本です。
仕事について、誰しもが悩むことはあると思います。仕事上の問題ではなく、もっと根本的に、「この働き方でいいのだろうか?」といった漠然とした想い。自分がしている仕事の価値(お金ではない)がどんなものなのか?なかなか分からないですよね。
こんなもんでいいでしょ?
安売りの商品や仕事には暗に「こんなもんでいいでしょ?」というメッセージが発せられているような気がしてならない、一方に丁寧に時間と心がけられた仕事がある。素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまず作られる料理。表には見えない細部にまで手の入った工芸品。一流のスポーツ選手によるすばらしいプレイに、「こんなもんで」という力の出し惜しみは無い。このような仕事に触れるとき、私達は嬉しそうな表情をする。それは「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを受け取るからだ。
確かに、ステキだなぁと思えるものは、カタチが多少変わっていても、傷があったとしても、作り手の丁寧な仕事が伺えるものだったりする。いかにも機械で作られていたものというのは、「適当さ」が感じられてしまう。そんなことじっくりと考えたことは無いけど、確かに何かメッセージを出している。
トライ&エラー
結局のところ、課題をクリアーしていく唯一の方法は、何度も失敗を重ねることしかない。他に方法はありません。デザインのスキルの大半は、その仕事の進め方の中にあると僕は思います。
大切なのは、本当の問題を発見していく能力です。表面的に目に付く問題点は、より根本的な問題が引き起こしている現象の一つに過ぎないことが多い。では、問題に深くアプローチしていく方法とはなんでしょうか。それは、机の上で頭を捻って問題を予測することではない。早い段階から、可能な限り具体的にテストし、トライ&エラーを重ねていくこと。これに尽きます。
基本的には、デザインや職人さんに焦点を当てたインタビューになっていますが、仕事のジャンルに関係なく、深く考えさせられます。そして、状況に流されたり、「こんなもんか」という仕事のやり方をしていた私には、その「違い」を突きつけられる感じがします。
是非、一度読まれてみてはいかがでしょうか?
自分の仕事をつくる西村 佳哲
おすすめ平均
自分の人生を誇れるものとするために
スタイルの見直しを薦めてくれる本
実例が分かりやすい
すべての働く人たち、これから働く人たちへおすすめできる一冊
考えさせられる1冊
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3 月 14th, 2008 at 8:55am |
【浅田次郎】 地下鉄に乗って
戦後、一代にして大財産を築き上げ一流企業を作った父親、それに反発し、ある日突然自殺をしてしまった優秀な兄。すべてを投げ出し、家出をして新しい家庭を築き暮らしていた俺。ある日、地下鉄の階段を上がると、三十年前の風景だった-
タイムスリップで過去を見ることで、見えなかったものが見えてくる。
そんな、いかにも泣けてしまいそうなストーリーです。
タイムスリップの話で印象的なのは、重松清「流星ワゴン」(オススメです)。
これも、父親との確執を抱えた息子が、タイムスリップをして父親と知り合う、
大きく違うのは、「地下鉄にのって」では、過去にタイムスリップするのが
1回きりでも、一人でもないということ。現実を変えられる、ことでしょうか。
浅田次郎のさらりと滑り込んでくるような文章に、抵抗も無く世界に入り込めるのですが、
読み終わってみると、なんだか胸に何かが溜まっているような感じです。
もっともっと、真次の父親に対する感情や、気持ちの変化が知りたかった。
結末は、、、、悲しい気持ちで一杯になってしまいます。
兄は興奮して指さしながら、大声で叫んでいる。
小さな弟は拍手をしている。そして言葉もなく立ちすくんでいる自分の姿を、
もうひとりの自分がはっきりと地下鉄の窓の中から見つめているのだ。
もしかしたらその瞬間に、肉体から魂だけが抜け出して地下鉄に乗り、
窓ごしのホームの風景を見つめていたのかもしれない、とも思う。
真次はそれぐらい、地下鉄を待ちこがれていた。
地下鉄(メトロ)に乗って (講談社文庫)浅田 次郎
おすすめ平均
一気に読み終えました
終戦を乗り越えて
毎朝通勤する、新中野で起こったドラマ
「昭和」のからからとした寂しさを含んだ雰囲気
秀逸の一語
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3 月 14th, 2008 at 7:57am |
【村上春樹】 羊男のクリスマス
最強の村上春樹+佐々木マキの絵本。二冊目を読みました。
羊男は頼まれたクリスマスソングを作曲しようとするが、作曲が出来ない。
なぜか??
昨年の聖羊祭日にドーナッツを食べた呪いがかかってしまったのだ!
呪いを解くために羊男は出かけるが・・・?
羊博士や双子の女の子、ねじけやなんでもなしが登場します。
私が知っているのは双子の女の子くらいだけど、
他の作品を読んだら登場するのでしょうか?
それにしても、羊男は沢山いるものなんですね!
それにびっくりです。
「それじゃ去年のクリスマス・イブに穴のあいたものを食べなかったかね?」
「ドーナツなら毎日昼ごはんに食べてますよ。
クリスマス・イブに食べたのがどのドーナツだったかは覚えていないけど、
えーと、とにかくドーナツを食べたことはたしかですね」
「穴のあいたドーナツかね?」
「ええ、そりゃそうです。ドーナツっていうと、だいたいみんな穴があいてますから」
珍しくストレートなストーリーでした。小さな子供でも楽しく読めそうですね。
羊男のクリスマス (講談社文庫)村上 春樹 佐々木 マキ
おすすめ平均
ねじり気に入ってます
本当に好きならね。
最強のタッグ!!
羊が好きになりました。
心温まるお話。
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3 月 13th, 2008 at 9:02am |
【村上春樹】 スプートニクの恋人
国立で小学校の教師をしているぼくは、大学知り合ったすみれに片思いをしていた。
すみれは変わった女性で、作家を夢見て気ままな生活を送っていたが、何故か僕とは気があった。そんな穏やかな日々が、ある時から劇的に変わっていく。すみれが生まれて初めて、恋に落ちた時から。
相手は、「ミュウ」という名前の韓国人(日本で育っているが)。美しい、17歳年上の、結婚している、しかも女性だった。
基本的には、ラブストーリー(ぼくとすみれの。)だと思うのだけど、
小説の中では、色々な比喩や暗示や、そしてあちらの世界とこちらの世界が錯綜する。
これは村上春樹のストーリーにはよく登場して、いつも混乱させられる。
今回はすみれがまるで煙のように姿を消してしまう。
まるであちらの世界に行ってしまったかのように。
そしてぼくは、すみれが帰ってくるのを待ち続ける。
どうしてみんなこれほどまで孤独にならなくてはならないのだろう、
ぼくはそう思った。~中略~
僕は眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯ひとつの絆として
天空を通過しつづけているスプートニクの末裔たちのことを思った。
彼らは孤独な金属の塊として、さえぎるものもない宇宙の暗黒の中で
ふとめぐり会い、すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。
かわす言葉も無く、結ぶ約束もなく。
まるで、すべてのことが悪いことへの暗示のように感じられてならないが、
私には、温かい最後を想像している。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」でも、自分が終わってしまう、
世界が終わってしまうような暗示がふんだんにある中、
たぶん、どんな状況であれ私は助かったのだと思うし、
「スプートニクの恋人」のぼくも、どんな形でも大切なすみれと再び会うことができた。
と(勝手に)信じている。
ぼくとすみれのやり取りのなかで、特に印象的だった記号と象徴の違いがある。
象徴は、一方通行で、記号は相互通行。ということだった。
天皇は日本国の象徴だけど、天皇と日本国は対等じゃない。
でも記号であれば、両者は交換が可能になる。
本を閉じて、改めてじっくりと考えてしまった。
象徴はなんとなく分かるけど、記号は交換可能なんだろうか?
確かに、記号はそれ自身を置き換えているだけだから、交換可能なのかもしれない。
・・・日頃考えもつかないことだけに、楽しいオドロキでした。
スプートニク
1957年10月4日、ソヴィエト連邦はカザフ共和国にあるバイコヌール宇宙基地から
世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた。
直径58センチ、重さ83.6kg、地球を96分12秒で一周した。
翌月3日にはライカ犬を乗せたスプートニク2号の打ち上げにも成功。
宇宙空間に出た最初の生物となるが、衛星は回収されず、
宇宙における生物研究の犠牲になった。
スプートニクの恋人 (講談社文庫)村上 春樹
おすすめ平均
程よく現実的で程よく幻想的。僕に合う本。
失われたもの、その代わりに帰ってきたもの
悲しく、悲しく、心がつまる
類型的に思えるが、やっぱり読んでしまう
単純にいい
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3 月 12th, 2008 at 8:00am |
【村上春樹】 ふしぎな図書館
大人のための絵本です。
村上春樹の小説によく登場する羊男が出てきます。
半分は挿絵になっていて、佐々木マキさんの親しみの沸く絵が
不思議な世界を案内してくれます。
僕は、図書館へ行って「オスマントルコの税金のあつめ方」を調べようと思った。
ところが、本を読むために連れて行かれた読書室は・・・?
ものの10分程度で読み終わってしまうのですが、
心がほっとさせられるストーリーでありながら、
相変わらず、何かを表現しているようにも感じられる素敵な本です。
ぼくはすっかり混乱していた。だって私立図書館の地下に
こんなおおがかりな迷路みたいなものがあるなんて。
ほんの小さな迷路だってつくる余裕はないはずだ。
「こんなにおいしいドーナッツを食べたのは生まれて初めてです」
「おいらがさっき作ったんだよ」と羊男は言った。「粉もじぶんでこねた」
「羊男さんがどっかでドーナッツ屋さんをはじめたら、すごくはんじょうすると思うな」
う~ん、おいしそう。ドーナッツが食べたくなった。
羊男を書いてみました・・・。
ふしぎな図書館 (講談社文庫 (む6-33))村上 春樹
おすすめ平均
リアルな、ファンタジーです。
マキの巻
世界の見え方
喪失
ある日
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3 月 11th, 2008 at 9:15am |
【奥田英朗】 最悪
「最悪」というと何を思い浮かべるでしょうか?
私は、地震とか火事とか、大きな借金とか、大怪我とか、そんなことですね。
タイトルから、「いったい、何が最悪なの・・・?」と戦々恐々だったのですが、
恐れていたような大災害も無ければ大怪我もありませんでした。
それでも、読み終われば「最悪だね」とつぶやいてしまいます。
主に平凡な三人の人生が、ほんのちょっとした弾みで悪いほうへ悪いほうへと転がっていく。
どれも、最初の一歩が悪いほうへ転がりだした後は、勢いをつけるかのように転がり続けます。
恐ろしいのは、三人の誰も(チンピラは別?)が普通で、良識があって共感がもててしまう。
何とかして助かって欲しいと願っても、止まらない。
落ちると分かっているのに、止まらないジェットコースターに乗せられているようです。
下請けの下請けの、小さな鉄工所の社長「川谷」は、工場の騒音で近所との軋轢を生み、
取引先からの無理な頼みや従業員との問題に頭を抱える。
銀行員の「みどり」は、組合の旅行先で支店長からセクハラを受け、
それを社内の権力闘争に利用されたり上層部からの酷い対応があったり。
パチンコやかつ上げで暮らしていたチンピラ「和也」は、ある日トルエンを盗み出したことが
きっかけで、ヤクザの怒りを買い、すぐに大金を用意しなければ殺されるような状況に立たされてしまう。
もう、鉄工所社長の「川谷」の話は、辛くて辛くて。
家族(子供)からは鉄工所を恥ずかしがられ、取引先からは1コ数円の仕事を請けるため、
無理な要求も聞かないといけない。少しでも不良品が出れば、7000円の仕事が15万もの弁償を請求される。
仕事を何とか回すため、夜遅くや土日も仕事をするが、機械を動かせば、後から立てられた隣マンションの
住人に騒音の苦情で警察を呼ばれるは、たて看板をされるは。
二人の従業員の一人は、軽い冗談のつもりで言った一言で、無断欠勤をしたり、納品に行ったまま、
行方知れずになってしまったり。
さらにはさらには、取引先からの無理押しで新しい機械を入れることになったが、銀行からの融資が、
突然おじゃんになったり・・・・。
こんな状況に追い込まれてしまったら精神がおかしくなってしまうんじゃないか?
本当に「最悪」な状況でした。
信次郎にとっていちばん辛いのは、鉄工所へ帰ることだった。
そこには金の工面がつかないタレパンがあり、加工すべき部品の山があり
騒音を非難する立看板がある。弁護士からは慰謝料を要求されている。
そして家族は途方に暮れている。
行き着くところまで行き着いた、この三人。
最後に待っているのは救いなんでしょうか?
それにしても、「サウスバウンド」「イン・ザ・プール」と、全くテイストの違う小説を書く、
この奥田英朗。スルリと読めてしまう文体、誰もが共感してしまう登場人物、気がつけば
引きずり込まれている自分を発見してしまいます。
最悪 (講談社文庫)
奥田 英朗
おすすめ平均
偶然に買ったんですが
自分には厚すぎる本だと思った が!!
物語に引き込まれ一気に読める
最悪過ぎて、読むのが辛かった
最悪というか最低ですね
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3 月 10th, 2008 at 10:15am |
【村上春樹】 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
村上春樹の代表作の一つ、
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読みました。
この小説は1985年に刊行された初の書き下ろし長編小説になっていますが、
作者はこの本を自伝的な小説であると位置づけているようです。
「世界の終り」と呼ばれる、高い壁で囲われたひっそりした街。
そこで新しく暮らすことになった僕。
そして、「ハードボイルド・ワンダーランド」で情報を暗号化する「計算士」としての私。
この二つの世界が交互に語られ進んでいきます。
(時系列は同時では無いようです。)
「ハードボイルド・ワンダーランド」は東京に住む現実の世界。
ある日、博士に暗号の依頼を受け、「シャフリング」と呼ばれる高度な暗号を行うが、
その「シャフリング」は時限爆弾のように脳に作用し、時間が来ると
「私」の脳の回路を破壊してしまうことを知らされ、
残りの時間を数えながら過ごす「私」。
一方、「世界の終わり」では影(心)と切り離され、閉じた世界で日々を過ごしながら
一角獣の頭骨から「古い夢」を読みつつも、この街に残るべきかを悩む「僕」。
相変わらず抽象的な表現が多くて、読みつつも色々な想像が羽を広げます。
人によって解釈が異なる、受け取り方が異なる、禅問答のようです。
ネットを検索しても、色々な意見があって面白いですよね。
読者には誤読の権利がある!!ということなので勝手に解釈してみると、
この「世界の終り」は「私」の脳に出来上がった、もう一つの意識の世界、
博士が埋め込んだ第三の世界ということなんだろうと思います。
僕は、自分の無意識に作った第二の世界が無くなったので、第三の世界に入っていた。
そこは自分の心を持つことができない冷たい世界だった。
もし「世界の終り」で僕が何もせずに、影が死に街に住むことになったら
それはきっと、第三の意識に閉じ込められていたのでしょう。
でも僕は、自分がこの世界を作ったことを(博士ではない)
唄を通して発見し、影を失っても心を取り戻すことが出来ることを知る。
そして、影は逃げ、僕は「世界の終り」に残る。
影がこの「世界の終り」から逃げ出せたことで、現実の世界の僕は
最後に初めて「この世界から消えてなくなりたくない」と考えた?
この何日間かではじめてこの世界から消えたくないと思った。
私が次にどこの世界に行くかなんて、そんなことはどうでもいいことなのだ。
私の人生の輝きの九十三パーセントが前半の三十五年で使い果たされて
しまったとしても、それでもかまわない。
私はその七パーセントを大事に抱えたままこの世界の成り立ち方を
どこまでも眺めて生きたいのだ。
現実の私は最後に心を取り戻し、
「世界の終り」の僕は、時間をかけて心を取り戻し、
この世界を再構築していく。
そんな風に思いました。
太陽はなぜ今も輝きつづけるのか
鳥たちはなぜ唄いつづけるのか
彼らは知らないのだろうか
世界がもう終わってしまったことを
—”THE END OF THE WORLD”
村上春樹は、高校ぐらいのときに読んで「つまらない」と思ったんですが、
読めば読むほど、年をとればとるほど、文章の味が分かるようになる作品が
多いいのかなと思います。
この「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は
大好きな本の一冊になりそうです。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)
村上 春樹
おすすめ平均
確か3日くらいで読んだ気がします、うん
限りない喪失と再生
★5つじゃ足りないかな
楽しく、かつ深い小説
2つの世界のつながりが読むものを魅了する
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3 月 4th, 2008 at 4:13pm |
【伊坂幸太郎】 死神の精度
映画の予告で知ったのですが、伊坂幸太郎の小説だったんですね。
伊坂幸太郎は私も好きな作家なのですが、独特の雰囲気があります。
中でもこの「死神の精度」は、一番に好きな作品かもしれないです。
「死神」として人の死を見定める調査部の仕事をする千葉。
対象の人物と接触し、一週間で「可」か「見送り」かを見極める。
まじめにやるが、もちろん感情移入などしない。
だって仕事だから。
・・・このドライな考え方がいかにも現実感あります。
彼の仕事方針としては、何もなければ基本的には「可」。
そして8日後には相手は死ぬことになる。
それを見届けて彼の仕事は終了する。
そんな死神の彼の唯一愛するのはミュージック。
俺が仕事をするといつも降るんだ。
死神たちはミュージックに夢中だが、もちろん人間には興味がない。
だが、今日も人の死を見定めにやってくる。
なぜか。
それが彼らの仕事だからだ。
死を語っているにも関らず、
それを「仕事」として見つめる死神の感情は込められないが、
まじめに淡々と接していく中に、相手の人生の重さが伝わってくるんです。
どのストーリーも切なさと温かさに溢れています。
最後の短編にある「死神対老女」では、悟っているような老女に
多少振り回されている感がある死神がいいですね。
まるで老女のほうが、特別な何かの存在のような風格がありました。
年の功でしょうか。
晴れ渡る空と海。
このシーンは、是非映画でも観てみたい。
『映画:SweetRain 死神の精度』
死神の精度 (文春文庫 (い70-1))
伊坂 幸太郎
おすすめ平均
うーん
ここ何年かで最高!の短編集
死神が温もりを運んで来る
恋愛と老女
二つのジャンルを入れた短編小説の傑作
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